「バーチャルオフィスを使いたいけれど、実際の登記までどんな手順を踏めばいいのかわからない」 「申し込んでから登記が完了するまで、どのくらいの期間がかかるのだろう」
このような疑問をお持ちの方に向けて、バーチャルオフィスを使った登記の流れを順序立てて解説します。
この記事でわかること
- バーチャルオフィスで登記するまでの7つのステップと各ステップの所要期間
- 法人(株式会社・合同会社)と個人事業主それぞれの手順の違い
- 登記完了後に必要な手続きとよくある落とし穴
バーチャルオフィスで登記する全体の流れ
登記の全工程は「VO契約フェーズ」と「法的手続きフェーズ」の2段階で構成されます。
バーチャルオフィスを利用した登記は、大きく分けると「①バーチャルオフィスの契約手続き」と「②行政機関への登記・届出手続き」の2つのフェーズに分かれます。
全体の流れをまとめると、次のようになります。
| ステップ | 内容 | 目安期間 | |———|——|———| | STEP 1 | バーチャルオフィスを選んで申し込む | 1〜2日 | | STEP 2 | 審査・本人確認を完了させる | 2〜7日 | | STEP 3 | 住所を受け取り、定款・書類に記載する | 当日〜翌日 | | STEP 4 | 登記書類一式を準備する | 3〜7日 | | STEP 5 | 法務局に申請する | 申請当日 | | STEP 6 | 法務局の審査を経て登記が完了する | 7〜10日 | | STEP 7 | 登記完了後の各種手続きを行う | 2〜3週間 |
申し込みから登記完了まで、おおよそ2〜4週間程度を見込んでおくと安心です。急いで進めても最低2週間は必要になることが多いため、事業開始日から逆算して早めに動き始めることをおすすめします。
STEP 1:バーチャルオフィスを選んで申し込む(1〜2日)
最初のステップは「登記対応プラン」を持つサービスを選び、オンラインで申し込むことです。
登記に対応しているプランを選ぶ
バーチャルオフィスのプランは、住所貸し出しのみのものから、法人登記・郵便転送・電話番号付きなどさまざまです。登記に利用する場合は、「法人登記対応」と明記されているプランを選ぶことが必要です。
プランに「住所利用」だけが含まれていて「登記利用」が別オプションになっている場合もあります。申し込み前に契約内容を確認し、登記が可能かどうかを明示的に確かめましょう。
なお、バーチャルオフィスの利用自体は法律上認められています。ただし、業種によっては行政上の要件から利用が制限される場合があります(後述)。
主要バーチャルオフィスの月額料金目安
登記対応のバーチャルオフィスとして広く利用されている主なサービスの月額料金は、次のとおりです。
| サービス名 | 月額の目安 | 特徴 | |———–|———–|——| | GMOオフィスサポート | 720円〜 | 全国主要都市・即日審査も可 | | DMMバーチャルオフィス | 660円〜 | シンプルな料金体系 | | バーチャルオフィス1 | 880円〜(郵送費含む) | 月4回転送付き | | ワンストップビジネスセンター | 2,000円〜 | 全国100拠点以上 |
月額料金は各社プランによって異なります。郵便転送の頻度・追加料金の有無も比較してから選ぶことをおすすめします。
申し込みの手順
多くのバーチャルオフィスはオンラインで申し込みが完結します。
- 公式サイトから希望プランを選択
- 氏名・連絡先・利用目的などを入力
- 利用規約に同意して申し込みを完了
- 審査・本人確認の案内メールを受け取る
申し込み自体は10〜20分で終わることがほとんどです。申し込み後、事業者側の審査プロセスへ。
STEP 2:審査・本人確認を完了させる(2〜7日)
本人確認書類を提出し、事業者の審査を通過することで住所が利用可能になります。
本人確認書類を提出する
バーチャルオフィスの申し込みには、本人確認書類の提出が必須です。犯罪収益移転防止法の観点から、郵便物を取り扱うバーチャルオフィス事業者には、利用者の本人確認義務が課されています。
(参考…警察庁「犯罪収益移転防止法」)
一般的に求められる書類は次のとおりです。
- 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの本人確認書類
- 住所確認書類(公共料金の領収書、住民票など)
- 法人での申し込みの場合:法人登記謄本、代表者の本人確認書類
書類の提出方法はサービスによって異なり、スマートフォンで撮影してアップロードする方式や、郵送で原本を送付する方式などがあります。
審査期間の目安
本人確認書類の提出後、サービス事業者が審査を行います。審査期間はサービスによって異なりますが、即日〜3営業日程度が多く、長い場合でも1週間前後です。
審査が完了するとメールなどで通知が届き、住所の利用が可能になります。
> 画像:本人確認書類の提出イメージ
STEP 3:住所を受け取り、定款・書類に記載する(当日〜翌日)
審査通過後、住所の通知を受けたらすぐに定款・届出書への記載が可能になります。
利用可能な住所が通知される
審査完了後、利用可能な住所が通知されます。この住所が、法人登記や開業届に記載する「事業所の住所」です。
住所が確定したら、次の書類にその住所を記載します。
法人設立の場合
- 定款(株式会社の場合は公証役場での認証が必要)
- 設立登記申請書
- 登記すべき事項(別紙)
個人事業主の場合
- 開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)
- 青色申告承認申請書(希望する場合)
定款の作成は紙での作成と電子定款の2種類があります。電子定款を利用すると、公証役場に支払う印紙代4万円が不要になるため、電子定款のほうが費用を抑えられます。
STEP 4:法人登記書類一式を準備する(3〜7日)
株式会社か合同会社かによって必要書類が異なります。合同会社のほうが書類は少なく費用も低め。
準備が必要な書類
法務局への申請に必要な書類は、会社の種類によって異なります。合同会社(LLC)は株式会社に比べて書類が少なく、費用も低く抑えられます。
株式会社の場合
- 定款(公証役場の認証済み)
- 設立登記申請書
- 登記すべき事項(紙または電磁的記録)
- 資本金の払込みを証明する書類(通帳のコピーなど)
- 取締役の就任承諾書
- 印鑑届出書
合同会社の場合
- 定款(公証役場の認証不要)
- 設立登記申請書
- 登記すべき事項
- 資本金の払込みを証明する書類
- 代表社員の就任承諾書
- 印鑑届出書
法務局への登記申請は会社の本店所在地を管轄する法務局に行います。バーチャルオフィスの住所を使用する場合は、その住所を管轄する法務局への申請が必要です。
(参考…法務省「商業・法人登記申請手続」)
書類の準備が煩雑に感じる場合は、マネーフォワード クラウド会社設立やfreee会社設立などのサービスを利用すると、書類作成を効率的に進めることができます。
STEP 5:法務局に申請する(申請当日)
申請は「窓口持参」「郵送」「オンライン」の3種類。オンライン申請なら登録免許税が軽減されます。
申請方法は3種類
法務局への申請方法は次の3種類があります。
| 方法 | 特徴 | |—–|——| | 法務局の窓口に直接持参 | 担当者に確認してもらいながら提出できる | | 郵送で申請 | 遠方の方や時間が取れない場合に便利 | | オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム) | 24時間申請可能・登録免許税の軽減措置あり |
オンライン申請では、PCに専用ソフトウェアをインストールする必要がありますが、登録免許税が一部軽減されるメリットがあります。
(参考…法務省「登記・供託オンライン申請システム」)
登記にかかる費用
法務局への申請時には、登録免許税が必要です。
- 株式会社:資本金の0.7%(最低15万円)
- 合同会社:資本金の0.7%(最低6万円)
たとえば、資本金100万円の合同会社であれば、登録免許税は最低の6万円になります。
STEP 6:法務局の審査を経て登記が完了する(7〜10日)
申請受理から登記完了まで通常7〜10日。書類の不備がなければスムーズに進みます。
申請書類が受理されると、法務局が内容を審査します。審査期間は通常7〜10日程度です。書類に不備があると補正が必要となり、さらに時間がかかります。
審査が完了すると「登記完了日」が確定します。法人の成立日は、この登記完了日です。
登記完了後は、法務局で登記事項証明書(謄本)を取得できます。複数部取得しておくことをおすすめします。銀行口座の開設や各種手続きに必要になるためです。
> 画像:法人登記完了後の流れ
STEP 7:登記完了後の各種手続きを行う(2〜3週間)
登記完了はゴールではありません。税務署・年金事務所・銀行への手続きがここから始まります。
法人登記が完了したあとも、事業を開始するまでに複数の手続きが必要です。主なものを以下にまとめます。
| 手続き | 提出先 | 期限の目安 | |——-|——-|———| | 法人設立届出書 | 税務署・都道府県税事務所・市区町村 | 設立から2ヶ月以内 | | 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立から3ヶ月以内(または最初の事業年度終了日の前日) | | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 従業員を雇う場合は設立から1ヶ月以内 | | 健康保険・厚生年金保険の加入手続き | 年金事務所 | 設立から5日以内 | | 法人口座の開設 | 各銀行 | できるだけ早く |
(参考…国税庁「法人の設立等の届出」)
特に法人口座の開設は、バーチャルオフィスの住所を使用している場合に審査が厳しくなることがある点に注意が必要です。大手都市銀行は実態確認を重視する傾向があり、バーチャルオフィスの住所のみでは口座開設が難しいケースも見られます。信用金庫・ネット銀行・GMOあおぞらネット銀行などは比較的対応が柔軟な場合があります。事前確認が安心です。各金融機関の方針は変わることがあるため、必ず問い合わせてから進めることをおすすめします。
個人事業主の場合の流れ
法人設立と異なり、開業届1枚で手続きが完結します。最短1〜2週間での開業が可能。
法人登記ではなく、個人事業主として開業する場合はより手続きがシンプルです。
開業届の提出まで
- バーチャルオフィスを契約し、住所を取得する(STEP 1〜3と同様)
- 「個人事業の開業・廃業等届出書」に住所を記入する
- 税務署に提出する(開業から1ヶ月以内が目安)
開業届はe-Tax(国税電子申告・納税システム)でオンライン提出も可能です。
(参考…国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)
青色申告をする場合
青色申告の特別控除(最大65万円)を受けるためには、「青色申告承認申請書」を開業から2ヶ月以内に税務署に提出する必要があります。開業届と同時に提出しておくと手間が省けます。
個人事業主は法人と比べて登録免許税もなく、定款の作成も不要です。バーチャルオフィスの契約から開業届の提出まで、早ければ1〜2週間程度で完了できます。
バーチャルオフィスで登記する際の注意点
事前に把握しておくべき3つの落とし穴を確認しておきましょう。
業種によっては利用できない場合がある
士業(弁護士・税理士・行政書士など)、金融関連(貸金業・投資顧問など)、建設業許可などの許認可が必要な業種では、バーチャルオフィスの住所が要件を満たさない場合があります。
許認可の要件として「実際に使用できる事業所の存在」が求められるケースでは、バーチャルオフィスだと認められないことがあります。ご自身の業種に許認可が関係する場合は、事前に所管の行政機関や専門家にご確認されることをおすすめします。
バーチャルオフィス選びは登記実績を確認する
バーチャルオフィスの中には、登記対応を謳いながらも実際の運用が不安定なサービスもあります。選ぶ際には次の点を確認しておくと安心です。
- 法人登記の実績・利用社数を公開しているか
- 郵便転送のオプションが明確に設定されているか
- 契約後に住所が変わるリスクへの対応が明示されているか
- 電話・メールでのサポート体制があるか
住所が「シェア」されていることを理解しておく
バーチャルオフィスの住所は、複数の利用者が同じ住所を共有します。そのため、取引先や顧客がGoogleマップなどで住所を検索した際に、同じ住所を使う複数の企業が表示される場合があります。事業の性質によっては、信頼感の観点から注意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q. バーチャルオフィスの契約中に住所が変わることはありますか?
A. サービスによっては、事業者の都合(閉店・移転など)によって住所が変更になるケースがあります。住所が変わると法人登記の変更手続きが必要になり、登録免許税(1万円)も発生します。長期間安定して使いたい場合は、大手で実績のあるサービスを選ぶことが重要です。契約前に「住所変更リスクへの対応ポリシー」を確認しておくことをおすすめします。
Q. バーチャルオフィスの住所で銀行口座は開設できますか?
A. 開設できる場合とできない場合があります。大手都市銀行は実態確認を厳しく行う傾向があり、バーチャルオフィス住所での口座開設が難しいことがあります。一方、ネット銀行や信用金庫は比較的柔軟な場合があります。事業実態を示す書類(取引先との契約書、事業計画書など)を準備しておくことで審査に通りやすくなることがあります。
Q. 合同会社と株式会社、どちらがバーチャルオフィスとの相性がいいですか?
A. どちらでもバーチャルオフィスの利用は可能です。合同会社のほうが設立費用が低く、登記手続きもシンプルなため、小規模スタートには向いています。株式会社は対外的な信頼性が高い反面、設立費用・維持費がかかります。取引先の規模や事業計画に応じて選ぶとよいでしょう。
Q. バーチャルオフィスの住所で登記した後、実際のオフィスを借りたらどうすればいいですか?
A. 実際のオフィスに移転した場合は、法務局に「本店移転登記申請」を行う必要があります。同一の法務局管轄内であれば3万円、管轄外への移転であれば6万円の登録免許税が発生します。また、税務署・都道府県・市区町村への住所変更届も必要です。移転前に変更手続きのスケジュールを立てておくことをおすすめします。
Q. バーチャルオフィスで登記する際、定款にどのように記載すればよいですか?
A. 定款の「本店の所在地」欄に、バーチャルオフィスで取得した住所をそのまま記載します。「〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇ビル〇〇階」のように、番地・ビル名・階数まで正確に記載してください。公証役場での認証(株式会社の場合)を受ける前に、バーチャルオフィス事業者から正式な住所表記を取得しておくと安心です。
Q. バーチャルオフィス申し込みから登記完了まで最短何日かかりますか?
A. 最短でも2週間程度が目安です。審査が早いバーチャルオフィス(即日〜翌営業日)を選び、定款や登記書類の作成をスムーズに進めれば、法務局の審査期間(7〜10日)を含めて2週間弱で完了する場合があります。ただし書類の不備があると補正で時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめします。
まとめ
バーチャルオフィスで登記する流れは、「①バーチャルオフィスの契約・審査(STEP 1〜3)」と「②法的手続き(STEP 4〜7)」の2段階で進みます。申し込みから登記完了まで通常2〜4週間が必要になるため、事業開始のタイミングから逆算して早めに動き出すことが大切です。
個人事業主であれば開業届の提出だけで済むため、1〜2週間程度で手続きが完了します。法人設立の場合は、定款の作成・法務局への申請・登記完了後の各種届出など、やるべきことが多くなりますが、会社設立サービスを活用すると作業量を大幅に減らすことができます。
バーチャルオフィスを選ぶ際は、登記対応の実績・郵便転送のオプション・サポート体制の3点を確認してから申し込むことをおすすめします。
また、登記後の書類準備や確定申告には、会計ソフトを早めに導入しておくと手間が省けます。法人向けにはマネーフォワード クラウド(法人)、個人事業主にはマネーフォワード クラウド開業届が、手続きのサポートという点でも活用しやすいサービスです。
また、登記の方法や必要書類については「バーチャルオフィスで法人登記する方法」もあわせてご参照ください。

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